Friend Ship / 星野源
※とある課題で2年前に書いた文章です。今のほうがもう少し良く書ける気がする。
星野源の4thアルバム『YELLOW DANCER』(2015)の最後の曲。
君の手を握っても、胸の窓を開けても、《わからないまま》だと繰り返し歌いあげるこの曲は、ポップで明るいメロディでありながらも、哀しく切ない。
着実にリズムを刻んで時を歩めるビートと、”まま”という言葉の重なり(唇を閉じてから発せられ吸着感あるマ行の音が強調されることで、時の流れに逆らう響きを感じるのは筆者だけか)によって、一方向に流れる時の中で未来と過去に引き裂かれ、その引き裂かれた間隙にカタルシスが生まれる。
そして未来と過去に引き裂かれる中で、私たちはイマ=現在を生きているのだということに気づかされるのだ。
最後に唐突に《わかりあった》と歌い、《手を振りながら/離れゆく場所で/笑い合うさま》と終わるのは、アルバムの締め括りとしてのリスナーに向けた希望と惜別か。
どれだけ身近な存在でいても”わからない”——私とあなたはどこまでも絶対的に異なる「他者」である——という人間の普遍的で、身も蓋もない苦悩をそのまま音楽に乗せながら、そこにカタルシスを見出して最後にそっと希望を添える。
彼にしかできない、至極のポップ・ミュージックだ。